Piano Solo Thelonious Monk

「このピアノ、チューニングがずれてるだろう」と言いたくなるのがセロニアス・モンク(19171982 USA)の演奏だ。しかし、いつでもこうだから、決してピアノのせいではなく、わざとホンキートンクな音を出し、つまずきそうな弾き方をしているのだ。

この頃のモンクは、麻薬の不法所持で「キャバレー・カード」というライセンスを剥奪され、アメリカ国内での演奏ができなくなっていたという。そしてフランスに渡ったが、やはり、芸風がユニークすぎてあまり受け入れられなかったようだ。このアルバムはその時にパリで録音されたものだが、知名度が低かったせいか、ジャケットのスペルが「THEOLONIOUS」と間違って印刷されている(笑。

訥々と語るような不思議調のピアノが、いかにもモンクらしくて味がある。

一方でモンクは音楽理論に優れており、バド・パウエルやジョン・コルトレーンに音楽理論を教えて成功に導いたのはこの人だし、多くのミュージシャンが演奏する名曲Round Midnightは彼の作曲だ。ジャズ界の「天才」いや「鬼才」とは彼のことだろう。

音に耳を傾け、鬼才の世界観に浸って。

1954録音)