クラシックの殿堂で行われたコンサートのライブ。この第9集は、ジャズを支えた資産家女性「パノニカ」を追悼するステージ。
パノニカは、セロニアス・モンクのPannonicaやホレス・シルバーのNica’s Dream、ジジ・グライスのNica’s Tempo、ケニー・ドリューのBlues for Nica等々多くの曲に名前が登場するほど、ジャズメンから慕われた女性である。
簡単に経歴を紹介すると、1913年にイギリスの財閥ロスチャイルド家に生まれ、昆虫学者でもあった父から、新種の蝶と同じ「パノニカ」という名前をもらう。
幼少期からジャズに親しみ、ミュンヘンに音楽留学などもした。フランス人男爵と結婚し、大戦中は夫と共に自由フランス軍の諜報員として活動。離婚後セロニアス・モンクのRound Midnightを聴いて再びジャズに目覚めアメリカに渡り、モンクやチャーリー・パーカー、アート・ブレイキー、コールマン・ホーキンス、バド・パウエルなどのジャズメンと親しくなり、人種差別と戦いながら彼らの仕事や生活をサポート。
パーカーの死を看取ったり、家をなくしたモンク夫妻を自宅に住まわせたり、多くのジャズメンの溜り場として自宅を提供するなど、批判を省みずにジャズメンに尽くしたため、「ジャズの女神」「ジャズ男爵夫人」と称されている。
そんな彼女の遺言は「私の遺灰はハドソン川にまいて。時間は午前零時・・Round Midnight」
さて、このステージだが、フィンランド人ピアニストのIiro Rantala、テナーサックスのErnie Watts等が参加している。冒頭のRound MidnightはCharenee Wadeのヴォーカルで切々と歌い上げ、続いてパノニカに関係する曲が次々と演奏されていく。中でもNica’s Dreamはサックス2本をフロントに、軽快でノリの良い演奏が楽しい。
録音も臨場感があって素晴らしい音質だ。
このアルバムは神保町BIGBOYの林マスターの推薦。ドイツのACTというレーベルから出ており、店で掛けるとdiskunionに走る人が多いが、なかなか手に入りにくくなっているという。
Pannonica-Tribute to the Jazz Baronessという題名が不思議だったので、色々調べてみたら、ジャズ史の勉強になった(笑。
真っ赤なアイスローズヒップティーを飲みながら。
(2019録音)
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