Silver Liningとは、Silver lining in the dark clouds「暗い雲の後ろ側で銀色に輝く裏地」という比喩で、「希望の兆し」を表す言葉だ。コロナ禍で上原ひろみがそれを表現しようとして辿り着いたのが、弦楽四重奏とピアノのクインテットだったという。
先日、このクインテットがテレビ出演していて、「なにか苦労はありましたか?」という質問にバイオリンの西江辰郎(新日本フィル・コンサートマスター)が、「ひろみさんからグルーブが・・と言われたが、クラシックにはそういう概念がないので、グルーブって何ですか?と聞いた」という。ひろみの答えは「うねりです」だった。すべて楽譜どおりのオンタイムではなく、微妙に遅れたり前ノリになったり揺れ動くのがジャズだと。
このクインテットの演奏は、弦楽器はひろみが用意した楽譜を見て演奏しているが、ひろみは楽譜なしで、激しいメロディーをある程度のフリーハンドをもって弾いているようだ。
曲はすべて彼女の作曲で、始めの4曲が組曲、次いで単独曲が5曲あり、全体を通じて現在の閉塞感を打ち破る希望の想いを表現しているという。どの曲もクラシックとジャズの要素が美しく融合しており、さすがバークリー音楽大学作編曲科首席卒業と納得させられる。
そして、これはまぎれもなくジャズである。
BGMには馴染まないが、背すじを伸ばして渋めの赤ワインで。
(2021録音)
Komen