Get My Mojo Back 海野雅威


ニューヨーク在住のピアニスト海野雅威(うんの・ただたか 1980生)は2020年9月に黒人の集団から暴行を受け、右肩に大怪我を負った。その時彼は「チャイニーズだやっちまえ!」という声を聞いたという。コロナ禍の原因とも言われる中で中国人へのヘイトクライムが起こり、差別の連鎖が生じているとも考えられる。

それでも海野は、ジャズ仲間は黒人が多いこともあり、黒人を恨むという気持ちには全くならないと言う。そんな彼を支援するためにジャズ仲間がクラウドファンディングを立ち上げ、多額の治療費を集めている。

再起は難しいかもしれないと言われながらも、手術と懸命なリハビリにより、元どおりとはいかないまでも再びピアノを弾けるところまで回復してきた。


このアルバムは療養中に海野の頭の中で流れていたメロディーを思い出しながら作曲し、気心の知れた仲間たちとレコーディングしたという。聴いてみると意外なほど明るい曲ばかりで、海野が悲観していなかったことが良く分かる。


タイトルのMojoとは、「ブードゥー教の魔法のお守り」から転じたスラングで、不思議な力、魔力、幸運、パワー、(あるいは麻薬)といった意味なので、「Get My Mojo Back=魔法のパワーを取り戻せ」という事じゃないかと思う。


いずれにしても、ニューヨークで多くのレジェンドや仲間たちと出会えた幸運と、彼らにもまれて腕を磨いてきた海野のチャレンジ精神は確実に回復に向かっているし、さらに大きなインスピレーションを得て作品を生み出していくだろう。


ニューヨークの春風を想像しながら。


2021録音)