スタン・ゲッツ(ts、1927~1991)が死の3か月前に行ったラストライブ、彼が最期に組んでいたケニー・バロン(p)とのデュオである。
がんを告知され、死期を悟ったゲッツの遺言のような演奏の記録だ。
ゲッツは若い時から、歌心あふれるメロディーに定評があり、このライブでも湧き出るような美しいソロを聴かせ、バロンのピアノが控えめに寄り添う。
ただ、バロンがソロを弾いている時にはゲッツは全く吹いていない。肝臓癌を患っていたため身体がかなり苦しくて、座って休んでいたようだ。
この7枚組コンプリート盤では、チャーリー・ヘイデン作曲の「First Song」が3回収録されており、特にDisk6の演奏がとても悲しい音色で凄味がある。原曲はヘイデンが妻のために書いたラブソングだが、ゲッツはこれが自分のラストソングだとでも言うように。
気難し屋でエゴイストだったり、人種差別を公言したり、麻薬欲しさに強盗事件を起こしたり、離婚して膨大な慰謝料を要求されたり・・生活面ではあまり評判が良くなかったテナーマンの、最期の輝きはあまりにも美しく、悲しい。
人としゃべりたくない、静かな夜に。
(1991録音)
7枚組みのコンプリート盤は入手しづらくなっているが、2枚に編集された盤も出ている。
試聴はこちら(FirstSong)https://www.youtube.com/watch?v=uyeG55zQeWw
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