冬の夜は空気が澄んで、晴れた空にくっきりと月が見える。特に雪が積もった日は、妙に明るくて気味が悪い。耳を澄ますとキーンと冷気が聞こえるようだ。
そんな空気感に敢えて音を乗せるとしたら、抜けのいいアルトサックスかもしれない。
麻薬に溺れて、何度も活動を休止していたアート・ペッパー(as)の晩年の復帰作がこのアルバム。彼の強い希望により、ストリングスとの唯一の共演アルバムとなった。共演と言ってもストリングスはあくまでもバックで静かに流れているだけだが。
このアルバムでのペッパーは、テクニックを弄するわけでもなく、寂しい音で歌い上げる。
まさに大人の魅力とでも言おうか、深い人生の色が感じられる。
活動休止中に刑務所で、病室で、見上げた月はこんな色をしていたのだろうか?
空気までもが凍るような、寒い夜更けに。
(1981録音)
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